2025年5月22日、電気自動車（EV）エコシステムは大きな節目を迎えました。デジサートと長年のパートナーであるEontiが主導する「SAE EVPKIトラストネットワーク」の本番環境が正式にローンチされたのです。これは世界初の真に中立的でグローバルなセキュアかつ相互運用可能なEV充電プラットフォームであり、あらゆる車種、あらゆる充電器、あらゆる場所での利用を想定して設計されています。

5年にわたる基盤構築の成果

デジサートとEontiは2019年からこの瞬間に向けて取り組んできました。両社は共同でEVPKIアーキテクチャ全体を支えるオリジナルの証明書ポリシー（Certificate Policy：CP）を策定・提供。この基盤が、EVエコシステム全体におけるデジタルトラスト、ガバナンス、コンプライアンスの運用基準を定めました。

そして現在、デジサートとEontiはコンソーシアムと連携し、新たなCertificate Trust List（CTL）仕様を共同開発・提供。これはオープンで相互運用可能なPKIの中核となるものです。2025年5月には、デジサートのSoftware Trust Managerを使用し、ポリシーベースの制御とFIPS 140-3準拠のHSMで保護された署名鍵を用いて、初のCTL署名ツールのキ―セレモニーを実施しました。

この節目は、デジサートとEontiが世界の重要インフラPKIの分野で信頼されるパートナーとして確立してきた運用の厳格さ、技術的な透明性、そしてポリシーガバナンスの上に成り立っています。これには以下のプロジェクトが含まれます。

• Next Generation 9-1-1 PCA PKI： 暗号化・認証された緊急通報（9-1-1）通話、GISおよびテレマティクスデータの保護
• OpenADR PKI： 電力会社およびグリッド運用者向けPKI
• ATSC：次世代ブロードバンドテレビ信号署名PKI

そして、これらのデバイスが数千、数万単位で環境全体に展開されると、適切なツールがなければ可視性や制御が困難になることは容易に想像できます。

このローンチがもたらす変革

長年にわたり、オープンなトラストフレームワークの欠如がグローバルなEV充電の発展を阻んできました。プロプライエタリ（独自）かつ分断されたシステムにより、自動車メーカーや充電事業者（CPO）、電力会社は、ドライバーが求めるシームレスな充電体験を実現できませんでした。

しかし、その時代は終わりました。SAE EVPKIネットワークは、資格を持つPKIプロバイダが信頼された参加者として加入できるようにすることで、これらの障壁を取り除きます。相互運用性はもはや将来の目標ではなく、新たな標準です。

「SAE EVPKI本番環境の立ち上げは、グローバルEV市場における転換点です」とSAE ITC EVPKIディレクターのティム・ワイゼンバーガー氏は述べています。「私たちはオープンな競争を可能にし、エコシステム全体の成長を加速させ、すべてのEVドライバーに安全でシームレスな充電体験を提供できるようにしています。」

デジサート、Eonti、そして業界パートナーシップの力

このネットワークは一夜にして生まれたものではありません。長年にわたる深い協働の成果です。このパートナーシップは、世界中の主要な自動車メーカー、充電事業者、テクノロジーリーダーを結び付けています。主な参加企業は以下の通りです。

• BMW
• Ford
• GM
• Mercedes-Benz
• Stellantis
• Toyota
• Volkswagen Group
• ABB
• Rivian
• ChargePoint
• Shell Recharge
• Electrify America
• その他のメンバー一覧はsae-itc.com/programs/evpkiをご覧ください。

次のステップ：オープンEV充電へのロードマップ

Certificate Trust List（CTL）の運用開始により、資格を持つPKIプロバイダはSAE EVPKIトラストネットワークへのメンバーシップ申請を開始できます。この次のフェーズにより、参加の幅が広がり、トラストの分散化とエコシステム全体の強化が進みます。このモデルは、重要インフラに求められる完全性とコンプライアンスを維持しつつ、競争を促進するよう設計されています。

コンソーシアムは、エコシステム全体での大規模な相互運用性テストの準備も進めています。OEM、充電事業者、テクノロジープロバイダは、実環境でネットワークを越えた機能性を検証します。これにより、EV、充電器、バックエンドシステムがベンダー、地域、プラットフォームを問わずシームレスに認証・通信できることを確認します。

ガバナンスフレームワークは継続的なコンプライアンスを前提に設計されています。ネットワークのPKIおよびポリシー構造は、グローバルな規制に整合しつつ、脅威の変化や新たな標準の登場に迅速に適応できるよう構築されています。耐量子コンピュータ暗号（PQC）、新たなプライバシー要件、進化する車両間通信（Vehicle-to-Grid）プロトコルなど、SAE EVPKIは業界の進化とともに成長するよう設計されています。

この変革に参加しよう

SAE EVPKIトラストネットワークは次のフェーズへと進んでいます。今こそその一員となる時です。資格を持つPKIプロバイダ、自動車メーカー、充電ネットワークはコンソーシアムに参加し、真に相互運用可能で安全かつ競争力のあるEVエコシステムの形成に貢献してください。参加は単なるアクセスを意味するものではなく、グローバルな充電インフラの構築・ガバナンス・信頼性のあり方に発言権を持つことを意味します。安全でコンプライアンスに準拠したスケーラブルなEV充電を実現したいなら、今がその時です。

デジサートは、この変革をリードできることを誇りに思っています。単なる技術提供者としてではなく、モビリティの未来を支えるシステムを共に構築する長期的なパートナーとして、SAE ITCおよび業界の協力者とともに、トラストネットワークの進化、参加拡大、そしてシームレスでグローバルなEV充電の実現に取り組んでいきます。