Device trust 10-07-2025

製品ライフサイクル全体でCRA要件を満たす:医療機器業界に求められる対応

Kevin Hilscher
Compliance Blog Hero

すべてのデバイスには物語があります。医療分野では、その物語は人間そのものです。糖尿病患者を支援する持続型血糖モニタ、精密手術を支援する手術ロボット、リアルタイムで患者と医療従事者に通知する心拍モニタ。どれも人々の生活に深く関わっています。

しかし、その裏にはもう1つの物語――コンプライアンスの物語があります。そして、欧州連合のサイバーレジリエンス法(CRA)によって、その物語が主役の座に躍り出ようとしています。

コンプライアンスはもはや「最後のチェック項目」ではない

これまでコネクテッドデバイスの規制準拠は、製品発売直前の「最終段階」として扱われてきました。ドキュメントの準備、監査、認証取得は、多くの場合、設計・開発が完了した後に行われていました。

CRAはこの常識を覆します。コンプライアンスはもはや単発のイベントではなく、継続的な責任です。医療機器メーカーは、デバイスが安全に「生まれる」ことだけでなく、ライフサイクル全体を通じて安全でサポートされ続けることを証明しなければなりません。

それはつまり次のことを意味します。

  • 設計初期段階からの安全性の確保
  • ソフトウェア更新や脆弱性修正に関するプロセスの文書化
  • デバイスライフサイクル全体におけるID、完全性、認証の証明
  • 発売後も継続する明確な説明責任

これは単なる法令遵守ではなく、デバイスの物語のすべての章に「信頼」を組み込むことです。

医療機器業界におけるリスク

CRAによって、リスクはこれまでになく高まっています。最大1,500万ユーロまたは全世界年間売上高の2.5%の罰金に加え、非準拠のデバイスはEU市場からの撤退を命じられる可能性があります。

しかし、より大きなリスクは「信頼の喪失」です。デバイスの安全性やサポートが不十分であると判明すれば、患者や医療従事者の信頼は一瞬で失われます。そして医療の世界では、一度失われた信頼を取り戻すのはほぼ不可能です。

したがってコンプライアンスは罰則を回避するためだけではありません。患者・医療従事者・規制当局が信じられる「安全・信頼・革新の物語」を実現するための要です。

CRAがもたらす新たな章

CRAは、医療機器の設計・構築・サポート方法を根本的に変えます。

  • コンプライアンスは継続的: 概念段階から廃棄まで、すべての段階に責任が及びます。
  • アップデートは義務: OTA(無線)パッチや脆弱性対応はもはや任意ではありません。
  • ドキュメントは動的: 証拠はいつでも提示可能であることが求められます。
  • イノベーションと準拠の両立: コンプライアンスは進歩を妨げるのではなく、市場参入を促進する要素となります。

ホワイトペーパー「EU Cyber Resilience Act: What Manufacturers Need to Know」では、これらの要件を詳細に解説しています。要点は明確です――コンプライアンスはもはや静的な報告ではなく、常に進化する「物語」です。

デジサートが支援するコンプライアンス体制

CRAへの対応がイノベーションを妨げる必要はありません。DigiCert Device Trust ソリューションは、設計段階からコンプライアンスを組み込みます。

これらの機能を組み合わせることで、メーカーはCRA付属書Iの22項目中17項目をカバーし、準拠証明に大きなアドバンテージを得られます。

コンプライアンスを競争優位に

コンプライアンスは「負担」として捉えられがちですが、CRAはそれを「機会」に変えます。初期段階から準拠を証明できるデバイスは、市場投入が早く、アクセスを長期に維持し、規制当局や患者からの信頼を高めます。

設計段階からコンプライアンスを組み込むことで、開発チームは安心して革新を進められます。そして、準拠をデバイスの物語の一部として捉える企業は、それを差別化要素として活用できます。

要するに――コンプライアンスはライフサイクルの「終わりの章」ではなく、すべての信頼物語の「始まりの一文」です。

どこから始めるべきか

すべての医療機器メーカーが直面する課題は同じです。「チェックリスト型」から脱却し、ライフサイクル全体でコンプライアンスを実現することです。

朗報は、ゼロから始める必要はないということです。ホワイトペーパーEU Cyber Resilience Act: What Manufacturers Need to Knowでは、要件の整理とデジサートソリューションによる対応方法を紹介しています。