耐量子コンピューター暗号 (PQC) 04-23-2025

量子コンピュータと証明書ライフスパン短縮に備える

Kevin Hilscher
Quantum Blog Hero Image

今日の組織は、デジタルトラストに関して大きな混乱に直面しています。それも、1 つではなく 2 つあります。1 つ目に、量子コンピュータが急速に発展しており、データや通信を保護する暗号化アルゴリズムが破られる恐れがあります。2 つ目に、証明書の有効期間が 47 日間に短縮される予定であり、企業における証明書管理が大きく変わろうとしています。

いずれも、それぞれ単独だとしても深刻な問題です。それが重なるのですから、セキュリティチームと IT チームにとっては決定的な転換点となっています。成功するには、単なる認識だけではなく行動が必要です。暗号の俊敏性を確立する戦略的な統合型アプローチを採用し、デジタルトラストインフラの将来を保証しなければなりません。

幸いなのは、量子コンピュータに備える過程が、証明書の有効期間の短縮に備える道にも通じるということです。この 2 つは完全に別個の課題ではありません。一点に収束する力であり、統合的な単一の対応が求められます。

阻害要因その 1: 量子時代の脅威が現実のものとして迫りつつある

量子コンピュータは理論の域をはるかに超えてきました。Microsoft、Amazon、Google からの最近の発表に伴って、エラー訂正、キュービットの安定性、ハイブリッドコンピューティングモデルといった分野で進展が加速しています。そして、それとともに古典暗号への脅威も高まりつつあります。

CRQC(Cryptographically Relevant Quantum Computer、暗号解読に適した量子コンピュータ)が登場すると、RSA や ECC などの基礎的なアルゴリズムは使いものにならなくなります。その影響は致命的であり、セキュアなインターネット通信、金融取引、重要インフラの保護を支えている暗号化を破る恐れがあります。

この脅威は未来に限ったことではありません。「Harvest now, decrypt later(今収集し、後で解読)」攻撃のリスクはすでに存在しています。悪意のある攻撃者は、量子技術が実用的になってから解読する意図で、暗号化されているデータを今収集しているのです。機密の知的財産、個人データ、政府関連情報を保護している組織にとって、これは理論上のリスクではなく現実に差し迫った課題といえます。

阻害要因その 2: 証明書の有効期間の短縮で運用が再構築される

一方、TLS のエコシステムにも重大な変化が近づいています。業界では、2029 年までに証明書の有効期間が 47 日に移行します。この移行は主なブラウザベンダーによって推し進められており、セキュリティ強化を目的としたものですが、より高度な自動化、より迅速な更新サイクル、より柔軟な証明書管理が求められます。

多くの組織、特に複雑な環境やレガシーシステムを擁している組織にとって、これは業務上の大きな課題となります。手作業のプロセスやサイロ化された証明書管理のままで、証明書が 6 週間ごとに失効する世界ではとてもスケールアップに対応できません。

2 つの阻害要因、1 つの前進

2 つの阻害要因はそれぞれ別のものに見えますが、実際には 1 つの転換点です。そして、暗号の俊敏性、証明書ライフサイクル管理の自動化、PKI の刷新という同じ基盤機能によって、組織は両方の課題に正面から取り組む態勢を整えることができます。

デジサートを導入すれば、お客様はプロアクティブな統合型のアプローチを採用できます。以下ような点が変わります。

  • PQC に備える: NIST、IETF、および業界リーダーと協力して、現在の暗号化標準と将来の暗号化標準の両方をサポートできる耐量子証明書を実装できます。
  • 暗号の俊敏性を実現: 暗号資産を整理し、鍵と証明書の俊敏な管理プロセスを確立して、PQC の準備状況をテストできます。
  • 証明書管理の自動化: 最新のスケーラブルな自動化ツールを活用して、有効期間の短い大量の証明書の更新に対応する基盤を今整備できます。
  • ポリシーとインフラストラクチャの更新: チームは、内部ガバナンスとインフラストラクチャを見直し、最小限の中断で急速な変化に対応できるようになります。

信頼できるパートナーと協力して厳しいスケジュールに対応

NIST はすでに明確なロードマップを示しています。連邦機関と重要システムは、2030 年から 2035 年までに耐量子アルゴリズムへの移行を完全に終える必要があります。企業は 2029 年までに量子対応を完了すべきだと Gartner は推奨しています。この期限は、証明書の有効期間が 47 日に短縮される予定とも一致しています。

両方のマイルストーンを達成するために、組織は今すぐ行動を起こさなくてはなりません。TLS 1.3 へのアップグレード、暗号化資産の棚卸し、PQC 実装のテスト、高頻度の証明書更新をサポートするインフラストラクチャの構築などです。そこが遅れれば、運用の中断だけでなく、現実の脅威にさらされるリスクも生じます。

デジサートは、業界を越えた顧客と協力して、これらの課題に真っ向から取り組んでおり、顧客の PKI の刷新、証明書ライフサイクル管理の自動化、耐量子 TLS 1.3 証明書への移行を支援しています。これは、ただ次に来る事態に備えるだけではありません。すでに生まれつつある未来におけるデジタルトラストを確保することなのです。

デジタルトラストに関する最新情報

量子コンピュータへの備え暗号化の俊敏性証明書管理などのトピックについて詳細をご希望ですか?記事を見逃さないようにデジサートのブログを参照してください。