インターネットは信頼の上に成り立っています。私たちは、Web サイトが正当なものであること、ファイルが安全にインストールできること、メッセージが表示どおりの送信元から届いていることを信頼しています。しかし、デジタルコンテンツの生成が容易になる一方で検証が難しくなるにつれ、その信頼は揺らぎ始めています。次のステップは明確です。本物であることを証明する方法が必要です。
今求められているのは、データや ID を保護してきたのと同じレベルの保証を、私たちが日々目にし共有するコンテンツにも拡張することです。デジタル証明書や暗号化が、商取引やコミュニケーションにおけるインターネットの安全性を確立したのと同様に、創作および情報エコシステム向けの新たな信頼レイヤーが生まれつつあります。その中核にあるのがコンテンツのプロビナンス、すなわち、メディアがどこから来て、どのように編集されてきたかを暗号的に検証する能力です。
Coalition for Content Provenance and Authenticity(C2PA)は、このような完全性を測定可能かつ検証可能にすることを目的として設立されました。テクノロジープロバイダー、メディアプラットフォーム、セキュリティの担当者が連携し、検証可能なプロビナンスデータをデジタルコンテンツに埋め込むためのオープン仕様を策定しています。目標はシンプルでありながら強力です。人、システム、プラットフォームが、コンテンツの出所を把握し、制作から公開までの管理の連鎖を信頼できるようにすることです。
プロビナンスデータはコンテンツのワークフローに直接組み込むことができ、アプリケーションによって検証され、TLS、コードサイニング、ID 管理など、デジタル信頼を支える暗号技術と同じ原則に基づいて保護されます。コンテンツがデバイスやプラットフォームをまたいで流通しても、信頼データがそれに追従し、自動化されたシステムが各段階で正当性を確認できるようになります。
デジサートは、PKI を通じて Web サイト、ソフトウェア、デバイスを保護し、デジタル ID が大規模に機能する仕組みを長年にわたり定義してきました。その暗号保証に関する専門性は、コンテンツの真正性にも自然に拡張されています。
最近、デジサートは C2PA Trust List に掲載された最初の認証局の一つとなり、C2PA 準拠のジェネレータ、バリデータ、デバイス製品に対して証明書発行および信頼されたタイムスタンプを提供しています。これらの証明書により、開発者やコンテンツプラットフォームは、C2PA 標準に準拠した形でデジタルメディアの署名、検証、タイムスタンプ付与を行うことが可能になります。
さらにデジサートは、Creator Assertions Working Group(CAWG)を支援し、多様なクリエイティブワークフローにおいて真正性を維持するために、コンテンツマニフェストをどのように署名・検証すべきかの定義に貢献しています。これらの取り組みは、標準を実運用に落とし込み、信頼できるシグナルへと変換するものです。
AI によって生成されるコンテンツの規模拡大により、プロビナンスは不可欠なインフラとなっています。テキスト、画像、動画は、もはや検出だけでは不十分なほど精巧に生成・改変されます。必要なのは暗号的な証明、すなわち、コンテンツが本物であり、改ざんされておらず、既知の発信元によって作成されたことを検証可能な形で確認する方法です。
C2PA のようなプロビナンスフレームワークは、これらの証明をコンテンツワークフローに直接組み込むための新しいツールや API を可能にします。セキュリティチームは、コンテンツ検証を、ID、アクセス制御、データ完全性と並ぶ信頼モデルの一部として扱えるようになります。その結果、事後的な検出から、事前の検証へとシフトが進みます。
この変化は、ブランドや知的財産を守るだけではありません。デジタル信頼そのものの基盤を守るものです。コンテンツがよりアルゴリズム主導で生成される時代においても、真正性の連鎖が人によって検証可能であり、暗号的に健全であることを保証します。
C2PA Trust List へのデジサートの参加は、単なるマイルストーンではありません。信頼された認証局の意味そのものが進化していることを示しています。信頼は、ドメインやコードを超えて、私たちが日々消費し共有するコンテンツへと拡張されています。C2PA に基づくワークフローを採用する組織は、PKI の実績あるモデルを、新たなフロンティアへと広げているのです。そこでは、プロビナンス、完全性、透明性が「本物」の境界を定義します。
この進化は、静的な保証からインテリジェントな信頼への転換を意味します。新しい技術、新しいリスク、新しい創作形態に適応する信頼です。DigiCert ONE プラットフォームを通じて、組織はすでに証明書の管理、自動化されたワークフロー、IoT デバイスの大規模な保護を実現しています。プロビナンスと真正性のフレームワークが成熟するにつれ、これらの機能はデジタルコンテンツの署名、検証、タイムスタンプにも活用され、より信頼できるインターネットを支える結合組織となります。
デジタルメディアツールを開発または統合し、著作の証明、編集内容の検証、プロビナンスの大規模な埋め込みに関心をお持ちの方は、ぜひ次のステップの形成にご参加ください。DigiCert Content Trust ベータプログラムに参加して、C2PA に基づく署名および検証のための新しいツールを試し、デジタルコンテンツにおけるインテリジェントな信頼の未来を共に築きましょう。
本ベータプログラムは現在、技術者や開発者を主な対象としていますが、これらの機能の活用や将来の可能性に関心をお持ちの方からのご参加も歓迎します。すべてのお問い合わせに対応できるわけではありませんが、適切な場合には可能な限り連携を図ってまいります。