モノのインターネット (IoT) 11-28-2022

スマートデバイスで期待される Matter

Brian Honan
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スマートデバイスの成長、特にスマートホームの発達は目覚ましく、今ではあらゆる家庭用機器にスマート機能が組み込まれているように感じられます。スマート電球、スマートスピーカー、スマートテレビ、スマートセキュリティ、スマート家電、スマート暖房器具など、その種類は増える一方です。こうしたスマートデバイスは、私たちの家庭や日常生活に多くの利点をもたらします。暖房器具のスマート化によって、エネルギー使用量の管理性が向上し、エネルギー危機や気候変動への対処を考えるとその重要性はますます高くなっています。スマートセキュリティデバイスは、家や大切な人の安全を確保する安心感を与えてくれます。スマートエンターテインメントシステムは、個人的な娯楽の楽しみ方について選択肢を広げます。IoT デバイスは、私たちの日常生活をシンプルにしつつ、合理化するのです。

皆さんがもし私のような人間なら、COVID-19 のパンデミックに伴うロックダウンのときには、パン作りに時間を費やすのではなく、スマートデバイスを使って自宅を改善することに時間を使ったかもしれませんね。私は、家じゅうの各システムをアップグレードするプロジェクトをいくつか進めました。今ではその成果を満喫しています。

ただし、IoT やスマートデバイスのプロジェクトで不満もありました。ベンダーの違うデバイスは相互接続が難しく、場合によってはまったく不可能だったことです。人生では何ごともそうですが、自分のニーズに最も適したソリューションを使いたいと考えるものです。多くの場合、それは 1 つのベンダーで足りるものではないので、特定のニーズに最適と思われるソリューションを導入しようとして時間とお金を投資します。ところが、さまざまなスマートシステムが相互接続できないことに後から気づいたり、相互接続されていたとしても、非常に時間がかかってそのプロセスでフラストが増えたりすることがわかったりします。しかも、あるベンダーがソフトウェアやファームウェアをアップデートすると、システムを改めて統合し直さなければならないという、どうにもならない問題もあります。

そんなとき、スマートデバイスや IoT デバイスの相互運用性を高める新しいプロトコル標準があることを知り、私はとても興味を引かれました。そのプロトコルが Matter です。Connectivity Standards Alliance(略称: Alliance)がオープンソース標準として開発したもので、メーカー各社が製品を開発し、シームレスに統合して相互運用できるようにするための標準です。Matter を導入して応用すると、複雑な API や設定手順で異なるスマートシステムを相互に接続しようとする時代にさようならすることができます。あるスマートデバイスベンダーのプラットフォームから別のプラットフォームへログイン情報を提供する必要もなくなります。また、使用しているシステムのアップデートやアップグレードによって、スマートホームやオフィス環境が機能しなくなった場合のトラブルシューティングも不要です。Matter はそのような苦労をなくし、互換性の問題で特定のベンダーのソリューションに縛られるのではなく、消費者が自分の要件に最適なスマートシステムを選択できるようになります。

自称ギークであり、セキュリティとプライバシーに強い関心を持つ者として、この分野に特化した Matter には期待しています。23 年前、ブルース・シュナイアーが「複雑さはセキュリティの最大の敵」という格言を生み出しました。これは今でも、特にスマートデバイスの分野では真実味を帯びています。Matter の導入によって、家庭や職場におけるスマートシステムの複雑さは大幅に軽減され、セキュリティとプライバシー保護が改善されます。

スマートデバイスのセキュリティを確保するために、Matter の各デバイスは DAC(Device Attestation Certificate)を採用しています。各デバイスが本物であることを示す独自の証明書であり、メーカー各社が発行します。各 DAC は安全な暗号チェーンの一部として管理され、公開鍵基盤(PKI)を使用して、暗号化されたデバイス間の安全な通信を実現します。Matter はソフトウェアのアップデートがデジタル的に検証されたソースからのものであることも保証し、証明書ベースの署名を使用してソフトウェアとデバイスの完全性が保証されることを保証します。

Matter の開発と導入について、企業や法人のセキュリティ分野の多くは、どちらかというと軽視してきました。なにしろ、スマートデバイスは我々の関心の対象ではなく、主にホームユーザー向けの問題だからです。私自身は、Matter が企業のセキュリティに大きな影響を及ぼすと確信しています。

ここで思い出したいのは、BYOD(Bring Your Own Device)が企業ネットワークに導入されたときのことです。大多数のケースで、スマートフォンやタブレットなど個人所有のデバイスを企業ネットワークに接続することを支持したのは、IT 部門や CISO ではありませんでした。個人所有のデバイスからメールやその他のビジネスリソースにアクセスできるようにすることを要求したのは、ビジネスユーザーだったのです。

IoT ソリューション

そのときと同じように、ビジネスユーザーとリーダーは、職場を強化して生産性を向上させるために、スマートシステムの分野に注目するだろうと私は予測します。デスクからシステムにログインしようとするユーザーが、ただそのユーザーのパスワードを知っている人物ではなく、本当にその人物であることを確認するには、スマート CCTV カメラを企業ネットワークに接続し、SIEM と連携させる必要があるかもしれません。組織は、スマートデバイスや IoT ソリューションを生産ラインに導入することで製造プロセスを改善し、その結果として、部品や材料が時間内に注文されるように、ERP(Enterprise Resource Planning)システムに接続する必要があります。

規制当局の多くは、IoT が重要インフラにもたらすセキュリティ上の潜在的な脅威を認識し始めており、そうしたシステムのセキュリティを確保する法律や規制を導入しつつあります。2022 年の夏には、欧州連合のサイバーセキュリティ法が施行されました。その法律の一部として、ベンダーが IoT デバイスのセキュリティを確保することが求められており、これも Matter によって促される可能性があります。

Matter は、一般家庭でスマートデバイスを使用する人のセキュリティを向上させるだけでありません。スマートデバイスや IoT ソリューションを企業に導入するとき、企業のセキュリティ担当者をサポートし、ビジネスに価値を提供できるよう、熟知しておくべきプロトコルです。

いずれは、Matter マークが Wi-Fi マークと同じくらい認知されるようになり、一般家庭や企業、あるいは重要なインフラに導入するシステムが、セキュリティと相互運用性に関して認知および承認された基準を満たしていることを確信できるようになる、そんな日が来ることを期待しています。

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